べるぞね

子どもが積み木で遊んでいるあいだに、ちょっとだけスマホを見る。通知を1つ確かめるつもりが、気づくと別の画面を開いている。「パパ、見て!」と呼ばれても「うん、ちょっと待って」と生返事。そのうち子どもが怒って、積み木をくずす——年中の子と家にいると、身におぼえのある場面です。子どものスマホの使い方は気にしているのに、自分のスマホはどうでしょうか。今回は、親が子どもの前でスマホを使うことについて、大学の研究から調べました。

積み木の塔の横で腰に手を当てて怒っている子供と、ソファでスマホを見ていて気づかないパパのドット絵イラスト

ほぼ半分の親が、1日に3回以上じゃまされている

まず、これはどのくらいよくあることなのでしょうか。イリノイ州立大学のBrandon McDanielと、ミシガン大学の小児科医Jenny Radeskyは2018年、Child Development誌に研究を発表しました。アメリカの、両親がそろった170の家庭が対象で、子どもの平均年齢は約3歳です。

2人は、スマホやテレビなどの機器が親子のやりとりに割りこむことを「テクノフェレンス」(テクノロジーによるじゃま)と呼びました。親に「ふだんの1日で、機器のせいで子どもとの会話や遊びがじゃまされることは何回ありますか」と聞いています。

まったくない11%
1回17%
2回24%
3回以上48%

ふだんの1日に、機器のせいで子どもとのやりとりがじゃまされる回数(親の回答)。McDaniel & Radesky (2018) より作成

そして、母親がこの「じゃま」を多く報告している家庭ほど、子どものかんしゃく・落ち着きのなさ・ぐずりなどの問題が多く報告されていました。

つまり、子どもとの時間にスマホが割りこむのは、ほとんどの家庭で起きています。ただし、これは親へのアンケートで、ある時点の関係を見たものです。「スマホを見るから子どもが荒れる」のか、「子どもが荒れるから親がスマホに逃げる」のかは、この研究だけでは分かりません。

「荒れる→スマホに逃げる→もっと荒れる」の輪

その点を調べたのが、同じ2人が2018年にPediatric Research誌で発表した研究です。0〜5歳の子どもがいる183組の夫婦に、半年のあいだに4回、同じ質問に答えてもらいました。時間の順番を追うことで、どちらが先かを見ようとしたのです。

結果は、両方向でした。

  • 子どものかんしゃくや反抗が多いと、親の育児ストレスが上がり、そのあと親子の時間にスマホなどが割りこむことが増えた
  • 親子の時間にスマホなどが割りこむことが多いと、そのあと子どものかんしゃくや反抗が増えることが多かった

2人は、子どもの手のかかる行動につかれた親が、スマホに逃げこむ。すると子どもの行動がさらに悪くなる、という輪があるのではないかと書いています。

子どもがぐずっているときほど、スマホを開きたくなる。これは意志が弱いからというより、つかれたときのごく自然な逃げ場なのだと考えられます。ただ、その逃げ場が、次のぐずりを呼んでいるかもしれません。

ファストフード店で55組を観察すると

Radeskyらは2014年にPediatrics誌で、もっと直接的な観察も発表しています。ボストン周辺のファストフード店で、小さな子どもを連れた大人55組が食事をする様子を、気づかれないように記録しました。

55組のうち、40組の大人が食事中にスマホなどを使っていました。使い方はさまざまで、ちらっと見るだけの人もいれば、食事のあいだほとんどずっと画面を見ている人もいました。子どもの反応も、1人で遊ぶ子から、気を引こうとしてだんだん行動が大きくなっていく子までさまざまでした。そして、画面に深く入りこんでいた大人は、子どもがさわいだときにきつい言い方で返すことが多かったと報告されています。

店で見かけた様子を記録した研究なので、数字で何かを証明するものではありません。それでも、「呼んでも返事がない→声が大きくなる→親がいら立つ」という流れは、家でもそのまま起きていそうです。

とちゅうの電話1本で、言葉を覚えられなくなった

割りこみが子どもの学びにあたえる影響を、実験でたしかめた研究もあります。テンプル大学のJessa Reedらは2017年にDevelopmental Psychology誌で、2歳の子どもと母親38組の実験を発表しました。

母親に、子どもへ新しい言葉を2つ、1つずつ教えてもらいます。そのうち1つを教えているとちゅうで、研究者が母親の携帯に電話をかけ、やりとりを中断させました。結果、子どもは中断されなかったほうの言葉は覚え、中断されたほうの言葉は覚えていませんでした。母親がその言葉を口にした回数は、どちらも同じでした。

同じ回数だけ言葉を聞いても、やりとりがとちゅうで切れると、身につかなかったということです。2歳児の、言葉1つについての実験ですが、子どもにとって大事なのは「いっしょにいる時間の長さ」より「切れずに続くやりとり」なのかもしれません。

経営学のヒント:切り替えたあとも、頭は前の画面に残る

仕事の研究に、「スマホをしまったのに、うわの空」を説明してくれる考え方があります。経営学者のSophie Leroyが2009年にOrganizational Behavior and Human Decision Processes誌で発表した「注意の残りかす」(アテンション・レジデュー)です。

Leroyは実験で、ある作業を終えないまま次の作業に移った人を調べました。すると、体は次の作業に移っていても、注意の一部が前の作業に残ったままになっていました。そして、この残りが多い人ほど、次の作業の成績が悪くなりました。前の作業を終えること、とくに時間の限りがある中でやり終えることが、この残りを少なくしていました。

この考え方から、仕事の世界では「メールは時間を決めてまとめて見る」「通知を切って、ひとつの作業をやりきってから次へ行く」といったやり方がすすめられています。こまかく行ったり来たりするほど、どの作業にも頭が半分しか向かないからです。

家でも同じことが起きます。SNSやニュースには終わりがありません。読みかけのまま顔を上げても、頭の一部はまだ画面の中にいます。子どもの前にいるのは、スマホを置いた親ではなく、まだスマホのことを考えている親です。大事なのは「見る・見ない」より、見るなら区切りまで見て、きちんと終えてから戻ることだと言えます。

今日からできる対処法

どれも研究で効果をくらべた方法ではなく、上の研究の考え方をもとにした工夫です。

  1. 「見ない時間」を短く決める。ずっと見ないのは続きません。「ごはんのあいだ」「おふろから寝るまで」など、短い時間を2つか3つ決めて、そのあいだはスマホを別の部屋に置きます。
  2. 見るときは、口に出してから見る。「パパ、いまからお店の時間を調べるね。1分で終わるよ」。何をしているか分からないまま待たされるより、子どもは待ちやすくなります。
  3. 見るなら、区切りまで見て終える。返事を1つ送る、調べものを1つ終える、と決めて、終わったら画面を消して伏せます。開きっぱなしで顔だけ上げるのが、いちばんうわの空になります。
  4. 通知を切る。割りこみのきっかけの多くは通知です。子どもといる時間帯だけでも、音とバイブを止めます。急ぎの電話だけ鳴るようにしておけば十分です。
  5. ぐずっているときこそ、スマホに逃げない。いちばんむずかしいところです。逃げ場がほしいときは、スマホのかわりに「お茶を1杯いれる」「ベランダに10秒出る」など、すぐ戻ってこられる逃げ場を用意しておきます。

スマホをまったく見ない親になる必要はありません。仕事の連絡も、明日の持ち物の確認も、スマホの中にあります。研究が問題にしているのは使うことそのものではなく、子どもとのやりとりが、とちゅうで何度も切れることです。切れる回数を1日に1回か2回へらすだけでも、意味はありそうです。

まとめ

  • 親の48%が、ふだんの1日に3回以上、機器のせいで子どもとのやりとりがじゃまされると答えた。じゃまが多い家庭ほど、子どもの行動の問題が多く報告された(McDaniel & Radesky, 2018)
  • 半年の追跡では、「子どもが荒れる→親がつかれる→スマホが割りこむ」と「スマホが割りこむ→子どもが荒れる」の両方向が見られた(McDaniel & Radesky, 2018)
  • ファストフード店の55組中40組の大人がスマホなどを使い、深く入りこんだ大人は子どもにきつく返すことが多かった(Radesky et al., 2014)
  • 電話で中断された言葉を、2歳の子は覚えられなかった。聞いた回数は同じだった(Reed et al., 2017)
  • 終えないまま切り替えると、注意が前の作業に残る。見るなら区切りまで見て、終えてから戻る
参考にした情報
機器によるじゃまと子どもの行動:McDaniel & Radesky (2018) Child Development
半年間の追跡:McDaniel & Radesky (2018) Pediatric Research
ファストフード店での観察:Radesky et al. (2014) Pediatrics
電話による中断と言葉の学び:Reed, Hirsh-Pasek & Golinkoff (2017) Developmental Psychology
注意の残りかす:Leroy (2009) Organizational Behavior and Human Decision Processes