夜9時にふとんに入れたのに、10時をすぎても目がぱっちり。クッションの上でとびはねている。そういえば今日は、園でしっかりお昼寝をした日でした。休みの日は昼寝をしなくても平気なのに、平日だけ夜がおそくなる——年中の子を園にあずけていると、気になりはじめることです。4〜5歳に昼寝はまだ必要なのでしょうか。昼寝をすると、夜の眠りはどうなるのでしょうか。今回は、睡眠の医学研究と、厚生労働省の資料、国の保育の指針から調べました。

5歳で自分から昼寝をする子は、10人に1人
まず、この年ごろの子は、ほうっておくとどのくらい昼寝をするのでしょうか。東京医科大学の駒田陽子らは2012年、医学誌Sleep Medicineに、日本の保育園に通う0〜5歳の子ども967人の記録をまとめた研究を発表しました。母親に9日間、子どもの眠りを記録してもらっています。
平日は園で昼寝の時間が決まっているので、研究チームは園の予定がない週末に、ふだんから昼寝をしている子の割合を調べました。
3歳で半分、4歳で3割弱、5歳では1割弱です。研究チームは、日本の保育園児の昼寝は3歳の誕生日をすぎると自然にへっていく、とまとめています。
世界の研究44本をまとめたオーストラリアのクイーンズランド大学のSally Statonらの分析(2020年、Sleep Medicine Reviews誌)でも、4歳から5歳になるまでのあいだに、およそ80%の子が昼寝をやめていました。ただし研究によって数字の幅がとても大きく、5歳になった時点で昼寝をやめている子の割合は、37%から96%までばらついています。個人差が大きいということです。
昼寝が長い日は、ねる時刻がおそくなる
駒田らの研究では、もうひとつ分かったことがあります。2〜5歳の子は、昼寝が長かった日ほど、その夜にねる時刻がおそくなっていました。
福島大学(当時)の福田一彦らは2002年、3〜6歳の幼稚園児と保育園児441人の親にアンケートをとりました。昼寝の時間がある保育園の子は、昼寝のない幼稚園の子より、夜ねる時刻がおそく、夜の睡眠が短いという結果でした。そして、昼寝は夜の寝つきをおくらせているようで、前の晩の寝不足をおぎなうためのものではなさそうだ、と書いています。
海外の研究をまとめたものもあります。オーストラリアのクイーンズランド工科大学のKaren Thorpeらは2015年、医学誌Archives of Disease in Childhoodで、0〜5歳の昼寝についての研究26本を調べました。いちばん一貫していたのは、昼寝をすると、夜の寝つきがおそく、夜の睡眠が短く、眠りの質が下がるという関係で、2歳をすぎた子でとくにはっきりしていました。
昼寝には、いい面もある
では、昼寝は悪いものなのでしょうか。そうとは言えません。アメリカのマサチューセッツ大学アマースト校のLaura Kurdzielらは2013年、科学誌PNASに、園に通う3〜5歳の子ども40人の実験を発表しました。
午前中に、絵の場所を覚えるゲームをします。そのあと、ある日は昼寝をし、別の日は起きたまますごしてもらいました。すると、昼寝をした日のほうが、絵の場所を10%多く覚えていました。この差は、翌朝になっても残っていました。
ただし、大事な続きがあります。この効果がいちばん大きかったのは、ふだんから昼寝をしている子(週に5日以上)でした。ふだん昼寝をしない子(週に2日未満)では、昼寝をしてもしなくても、成績は変わりませんでした。
何時間ねればいいのか
アメリカ睡眠医学会は2016年、専門家13人が864本の論文を調べたうえで、子どもの睡眠時間の目安をまとめました。3〜5歳は、昼寝をふくめて1日に10〜13時間です。昼寝と夜をどう分けるかは、決められていません。
厚生労働省が2024年に公表した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、この目安を紹介したうえで、次のように書いています。
- 4〜5歳をすぎると、昼寝の必要性は下がる
- 昼寝をすることで、かえって夜の寝つきの悪さ、睡眠不足、朝の目覚めの悪さなどが悪くなる可能性が報告されている
- 夜の寝つきが悪い幼児は、昼寝をしないという選択が望ましい可能性がある
「可能性がある」というひかえめな書き方で、根拠としてあげられているのは、上で紹介した福田らの研究です。それでも、国の資料が「昼寝をしない選択」にふれていることは、知っておいて損はありません。
国の保育の指針は、「一律にしない」と決めている
「でも、園では全員ねかせるきまりだから」と思うかもしれません。じつは、保育園の運営のもとになっている国の「保育所保育指針」には、昼寝(午睡)について次の一文があります。
この指針の解説書は、さらにくわしく書いています。
- 3歳以上では、昼寝が必要な子と、必要としない子がまじることがある
- 5歳ごろの子は、小学校に入ってからの生活も見通して、保護者と連携しながら、少しずつ昼寝のない生活になれていくようにすることが大切
- 家庭でのねる時刻に配慮して、昼寝の時間や時間帯を工夫し、柔軟に対応する
つまり、「うちの子、夜なかなかねないので、昼寝を短くできませんか」と園に相談するのは、わがままではありません。国の指針が、園にもとめていることです。
経営学のヒント:「全員同じ」と「一人ずつ」のあいだ
会社の仕事には、いつも2つの引っぱり合いがあります。全員に同じやり方をあてはめる「標準化」と、相手に合わせて変える「個別対応」です。標準化は、手間が少なく、ミスもへります。個別対応は、相手にぴったり合うかわりに、手間がかかります。
経営学者のJoseph LampelとHenry Mintzbergは1996年、経営の専門誌Sloan Management Reviewで、この2つは「どちらかを選ぶもの」ではなく、ひとつながりの線の両はしだと書きました。現実の会社は、その線の上のどこかにいます。たとえば、土台は全員同じにして、最後の仕上げだけを相手に合わせる、というやり方です。
園の昼寝も、同じように考えられます。20人の子を少ない先生で見るのですから、「全員、同じ時間に横になる」という標準化には、ちゃんとした理由があります。一人ずつばらばらの時間割にするのは、むずかしい。でも、「全員同じ」と「一人ずつ」のあいだには、いくつも選べる形があります。
- 横にはなるが、ねなくてもいい(静かに絵本を見る)
- ねた子も、30分〜1時間で起こしてもらう
- 年長になる前の数か月で、少しずつ昼寝の時間をへらす
園にお願いするときは、「昼寝をやめさせてください」ではなく、「あいだの形はありますか」と聞くほうが、話がまとまりやすくなります。
今日からできること
1と3は上の研究や資料から言えること、2・4・5は考え方をもとにした工夫です。
- まず、1日の合計で見る。目安は、昼寝をふくめて10〜13時間です。夜がおそくても、昼寝と合わせてこの範囲に入っていて、朝きげんよく起きられるなら、あわてなくて大丈夫です。
- 1〜2週間、記録をつける。ねた時刻、起きた時刻、園での昼寝の長さ(連絡帳で分かります)を書きます。「昼寝が長い日は、ねるのがおそい」がわが子に当てはまるかどうかを、数字で確かめます。
- 園に相談する。記録を見せながら、「夜10時すぎまでねられない日が続いています。昼寝を短くする、横になるだけにする、といったことはできますか」と聞きます。国の指針も、家庭でのねる時刻への配慮をもとめています。
- 休みの日に、昼寝なしをためす。昼寝なしで夕方まで元気にすごせて、夜すんなりねられるなら、その子はもう昼寝を卒業しかけています。夕方にぐずって夕飯前にねてしまうなら、まだ必要です。
- ねる時刻より、起きる時刻をそろえる。昼寝をした日に、むりに早くねかせようとすると、ふとんの中の言い合いが長くなります。朝起きる時刻を平日も休日も同じにするほうが、生活のリズムは整えやすくなります。
昼寝が必要かどうかは、子どもによってちがいます。昼寝をやめたとたんに夕方のきげんが悪くなる子もいます。大きないびきをかく、昼間ずっとねむそうにしている、朝どうしても起きられない、といった様子が続くときは、小児科に相談してください。
まとめ
- 日本の保育園児で、週末に自分から昼寝をする子は、4歳で28.0%、5歳で9.0%(Komada et al., 2012)
- 2〜5歳では、昼寝が長い日ほど、その夜ねる時刻がおそかった(Komada et al., 2012)。保育園児は幼稚園児より夜ねるのがおそく、夜の睡眠が短かった(Fukuda & Sakashita, 2002)
- 26本の研究のまとめでも、2歳をすぎた昼寝は、夜の寝つきのおくれ・夜の睡眠の短さと関係していた。ただし証拠の強さは低い(Thorpe et al., 2015)
- 昼寝は記憶を助けるが、効果があったのはふだんから昼寝をしている子(Kurdziel et al., 2013)
- 3〜5歳の目安は、昼寝をふくめて1日10〜13時間(アメリカ睡眠医学会)。厚生労働省の睡眠ガイドは、寝つきが悪い幼児の「昼寝をしない選択」にふれている
- 保育所保育指針は、昼寝が「一律とならないよう配慮すること」と定めている。「あいだの形」を園に相談していい
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昼寝をやめる年齢のまとめ:Staton et al. (2020) Sleep Medicine Reviews
幼稚園児と保育園児の比較:Fukuda & Sakashita (2002) Perceptual and Motor Skills
昼寝と夜の睡眠の研究26本のまとめ:Thorpe et al. (2015) Archives of Disease in Childhood
昼寝と記憶:Kurdziel, Duclos & Spencer (2013) PNAS
睡眠時間の目安:Paruthi et al. (2016) Journal of Clinical Sleep Medicine
国の睡眠ガイド:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
保育の指針:保育所保育指針(平成29年告示)/保育所保育指針解説(平成30年)
標準化と個別対応:Lampel & Mintzberg (1996) Customizing Customization, Sloan Management Review