べるぞね

「なんで?」に「〇〇だからだよ」と答えると、また「なんで?」。もう一度答えても、また「なんで?」。そして「さっき言ったでしょ」と口にした瞬間、へそを曲げて泣きそうになる——4歳前後の我が家でよくある流れです。子どもを黙らせたいわけではないので、このループの正体と、イライラせず・へそも曲げさせずに付き合う方法を、子どもの質問を調べた発達心理学の研究と、トヨタの「なぜなぜ分析」の考え方から整理してみました。

「なんで?」と聞く子供にしゃがんで目線を合わせ「それはね」と答えるパパのドット絵イラスト

この記事の内容は、動画でも解説しています(約6分)。

そもそも、「なんで」はなぜ無限に続くのか

ミシガン大学のBrandy Frazier、Susan Gelman、Henry Wellmanが2009年にChild Development誌に発表した研究(「Preschoolers' Search for Explanatory Information Within Adult–Child Conversation」)では、2〜4歳の子ども6人分の日常会話データ(CHILDESデータベース)を分析し、子どもが「なんで?」と聞いたあと、大人の答え方によってその後の反応がはっきり変わることが分かりました。

大人がちゃんとした因果関係の説明(原因と結果がつながる答え)を返した場合、子どもは「そうなんだ」と納得したり、その答えに対してさらに掘り下げる質問をすることが多くなりました。逆に、大人が説明になっていない答え(はぐらかし・単なる事実の言い換え・「そういうものだから」など)を返した場合、子どもは同じ質問をもう一度聞き直したり、自分なりの説明を自分で作って言ったりすることが多くなったのです。

つまり「なんで」のループが止まらないのは、反抗でもわがままでもなく、「さっきの答えは、まだ自分が探している答えになっていない」という子どもからのサインである可能性が高いということです。

「さっき言ったよ」でへそを曲げる理由

ここから見えてくるのが、「さっき言ったでしょ」でへそを曲げられる理由です。親の側は「同じ質問に2回答えた」という事実で見ていますが、子どもの側からすると、まだ自分の中で「分かった」という感覚に到達していない状態で「もう答えたはず」と打ち切られたように感じている可能性があります。子どもにとっては「2回目の質問」ではなく、「まだ途中の質問」を止められた、という体験になっているわけです。

これは子どもが悪いわけでも、答え方が下手だったわけでもありません。4歳前後の子どもに届く「因果関係の説明」は、大人が思うより噛み砕いた・具体的なものである必要がある、というだけの話です。「電気は電気だからつくんだよ」より「スイッチを押すと、電気の通り道がつながって光るんだよ」の方が、子どもにとっては本当の意味での「説明」になりやすい、というイメージです。

経営学のヒント:トヨタの「なぜなぜ分析」に学ぶ

「なぜ」を何度も繰り返すこと自体は、実はビジネスの現場でも重視されている手法です。豊田自動織機の創業者・豊田佐吉が考案したとされ、のちにトヨタ生産方式の中で大野耐一が体系化した「なぜなぜ分析(5 Whys)」は、問題に対して「なぜ?」を5回ほど繰り返すことで、表面的な原因ではなく本当の根本原因にたどり着くという考え方です。大野耐一は著書『トヨタ生産方式』(1978年)の中で、この手法をトヨタの科学的なものの見方の土台と位置づけています。

この手法が現場で機能する前提として重要なのが、「なぜ」を問い詰め・責める道具にしないことです。トヨタの現場では、問題を「悪いこと」ではなく「改善のチャンス(カイゼン)」として捉え、担当者を責めずに一緒に原因を掘り下げる姿勢が徹底されています。責められていると感じた瞬間、人は本音の「なぜ」を止めて防御に入ってしまい、分析そのものが機能しなくなるからです。

子どもの「なんで」ループも、構造はよく似ています。繰り返される「なんで」を「うちの子はしつこい」と受け止めるか、「まだ根本にたどり着いていないサイン」と受け止めるかで、こちらの対応もへそを曲げられる確率もかなり変わってきます。

実践的な対処法4つ

  1. 同じ質問が返ってきたら、同じ言葉で繰り返さない。「なんで」がもう一度返ってきたということは、直前の説明が子どもにとって「因果関係」として機能していなかったサインです。同じ言葉を繰り返すより、もっと具体的な例え・目に見えるものに置き換えて答え直す方が、ループが止まりやすくなります。
  2. 分からない時は「ママ(パパ)も分からない、一緒に調べてみようか」と正直に言う。Frazierらの研究で反応が変わるポイントは「答えが完璧かどうか」ではなく「本気で因果関係を説明しようとしたかどうか」です。知ったかぶりで済ませるより、正直に分からないと伝えて一緒に考える方が、子どもの探索は満たされやすくなります。
  3. 「さっき言ったよ」ではなく「もう一回言うね」で受け止める。子どもにとっては「まだ途中の質問」なので、打ち切られたと感じさせる言葉より、続きに付き合う言葉の方がへそを曲げにくくなります。
  4. ループが3〜4周したら、逆に「〇〇はどう思う?」と聞き返してみる。Frazierらの研究では、説明が不十分だった時、子どもは自分なりの説明を自分で作ることもあると分かっています。その「自分で考える力」を先回りして引き出してあげると、ループが子ども自身の思考の時間に変わります。

まとめ

  • 「なんで」のループが続くのは反抗ではなく、直前の答えが子どもにとって因果関係の説明として機能していなかったサインという研究がある(Frazier, Gelman & Wellman, 2009)
  • 「さっき言ったよ」でへそを曲げるのは、子どもの中では「まだ途中の質問」を打ち切られたと感じている可能性が高いから
  • トヨタの「なぜなぜ分析」も、なぜを責める道具にせず、根本原因にたどり着くための手がかりとして扱うことで機能する。子どもの「なんで」も同じ構え方が効く
  • 同じ言葉を繰り返さず具体例に置き換える、分からない時は正直に言う、「もう一回言うね」で受け止める、ループが続いたら聞き返してみる、の4つが実践的な対処法
参考にした情報
子どもの質問への反応研究:Frazier, Gelman & Wellman (2009) Child Development
なぜなぜ分析(5 Whys)の由来:Five whys - Wikipedia