「失敗してもいいから挑戦してほしい」とはよく言われますが、具体的に何をすれば子どもがそうなるのかは意外とふわっとしています。今回は「レジリエンス(逆境から立ち直る力)」の研究を軸に、具体的な行動として整理しました。

土台になる研究:カウアイ島の40年追跡調査
心理学者エミー・ワーナーらは、ハワイ・カウアイ島で1955年に生まれた698人の子どもを40年間追跡調査しました。未熟児・貧困・親の精神疾患など発達リスクを抱えていた子どもの中でも、約3分の1は良好な発達を遂げていたことが分かっています。10代で一度つまずいても、30代で再び良好な適応に戻ったケースもありました。
この研究などをもとにした「国際レジリエンス・プロジェクト」では、レジリエンスを支える資源が3つに整理されています。
| I HAVE (外部の支え) | 相談できる大人がいる、頼れる人間関係がある |
|---|---|
| I AM (内的な資質) | 自分の力を信じられる、将来に楽観的でいられる |
| I CAN (対処スキル) | 問題を解決する方法を知っている、感情をコントロールできる |
もう一つの土台:失敗の「原因」をどう説明するか
心理学者ワイナーの原因帰属理論では、成功・失敗の原因を「能力」「努力」「課題の難しさ」「運」の4要因に分け、それぞれを内的か外的か、安定か不安定か、コントロールできるかできないかという軸で捉えます。同じ失敗でも、「自分の能力が低いから」(内的・安定・コントロール不可)と捉えるか、「今回のやり方が合わなかったから」(不安定・コントロール可能)と捉えるかで、その後の意欲や次の行動が変わるとされています。
具体的な9つの行動
I HAVE:頼れる存在だと実感させる
- 相談してきたときは手を止めて真剣に取り合う(「困ったときはこの人に言えばいい」という実感の積み重ねが土台になる)
- 親自身が挑戦し、時には失敗する姿を見せる(完璧な大人ではなく、挑戦して失敗もする姿を見せることがロールモデルになる)
- 結果が悪くても関係性は変わらないと伝える(失敗したら愛情まで減るのではないかという不安を作らない)
I AM:自分を信じる言葉の使い方
- 「できない」ではなく「まだできない」と言う(ドゥエックの提唱する“Not Yet”の考え方。「今の到達点」であって「能力の限界」ではないと伝える)
- 失敗の原因を能力でなくやり方・練習量に結びつけて話す(原因帰属理論でいう、コントロール可能な要因への言い換え)
- 挑戦した行為そのものを承認する(「頭いいね」より「頑張ったね」の考え方がそのまま活きる)
I CAN:対処スキルを育てる関わり方
- 大きな挑戦の前に、小さく試せる機会を作る(いきなり大舞台ではなく、小さな失敗を安全に経験させる)
- 先回りして失敗を防ぎすぎない(転ばぬ先の杖を出しすぎると、対処スキルを育てる機会自体を奪ってしまう)
- 挑戦のあとに「次はどうする?」と一緒に振り返る(結果の良し悪しより、次に活かす習慣そのものを育てる)
経営学的に見ると:リーンスタートアップの「早く安く失敗する」
この9つのうち、特に「小さく試す」という考え方は、スタートアップの世界で言われるリーンスタートアップの発想とそのまま重なります。起業家エリック・リースが提唱したこの考え方の核心は、大きな賭けに出る前に、最小限の労力で作った試作品(MVP)で小さく素早く検証することです。検証してうまくいかなければ、早いうちに方向転換(ピボット)します。
この設計の狙いは「失敗しないこと」ではなく、失敗のコストを小さく、学びを最大化することにあります。子どものチャレンジの機会づくりも同じ発想が使えそうです。いきなり大きな失敗を経験させるのではなく、日常の中で小さな挑戦と小さな失敗を積み重ねられる場を用意しておく。その積み重ねが、将来大きな挑戦に直面したときの「対処スキル(I CAN)」の土台になります。
まとめ
- カウアイ島の40年追跡調査では、リスクを抱えた子どもの約3分の1が良好な発達を遂げていた。レジリエンスは「I HAVE・I AM・I CAN」の3資源で支えられる
- 失敗の原因を「能力」でなく「やり方・努力」に結びつけて話すと、次の挑戦への意欲が保たれやすい(原因帰属理論)
- 「できない」ではなく「まだできない」という言葉を使う(ドゥエックの“Not Yet”)
- 大きな失敗を避けさせるより、小さな失敗を安全に経験させる方が対処スキルは育つ。リーンスタートアップの「早く安く失敗する」発想と構造が同じ
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原因帰属理論:kotento/ダイコミュ
"Not Yet"の考え方:ライブドアニュース
リーンスタートアップ・MVP:Harmonic Society