べるぞね

休みの日、気がつくと子どもは朝から家の中。ブロック、お絵かき、動画。どれも顔を近づけて見ています。「目が悪くなるよ」と言いながら、親のほうもスマホを見ている。自分も小学生からメガネだったので、子どもの目は気になります——年中の子がいる家庭で、ふと心配になることです。「外で遊ぶ子は近視になりにくい」と聞きますが、本当でしょうか。今回は、学校で実際にためした医学の実験と、文部科学省の調査、眼科の学会の説明から調べました。治療の話ではなく、ふだんの生活でできることの話です。

晴れた広い原っぱで、赤いたこをあげながら走る子供と、帽子を押さえて笑いながら追いかけるパパのドット絵イラスト

日本の子どもは、小学校の3年間で近視が3倍になる

まず、今の日本の子どもの目はどうなっているのでしょうか。文部科学省は令和3〜5年度に、全国の29の小中学校で「児童生徒の近視実態調査」を行いました。

小学1年生のとき(令和3年度)12.43%
同じ子たちが小学3年生のとき(令和5年度)35.87%

近視にあてはまった子の割合(棒は50%を右はしとした長さ)。文部科学省「児童生徒の近視実態調査」より作成。調査のうえでの基準で、医師の診断ではない

小学1年生で約8人に1人だった近視が、2年後の3年生では約3人に1人になっていました。希望した学校での調査で、全国の代表の数字ではありませんが、小学校に入ってから急にふえることは見てとれます。

幼稚園の子はどうでしょうか。文部科学省の令和7年度の学校保健統計では、裸眼の視力が1.0に届かない子は、幼稚園で23.90%、小学校で36.07%でした。視力が1.0に届かない理由は近視だけではありませんが、入学前から4人に1人ほどは、すでに見えにくさをかかえています。

世界でも同じ流れです。オーストラリアのBrien Holden視覚研究所のチームは2016年、145の研究をまとめて、2050年には世界の人口の49.8%が近視になると予測しました。

学校で「外の時間」を1日40分ふやす実験

外にいる時間と近視の関係は、はじめは「外でよく遊ぶ子に近視が少ない」という観察から分かってきました。でも、それだけでは「外遊びのおかげ」とは言えません。そこで、実際に外の時間をふやしてみる実験が行われました。

中国の中山大学のMingguang Heらは2015年、医学誌JAMA(アメリカ医師会の雑誌)に、広州の小学校12校の1年生、約1,900人の実験を発表しました。学校をくじで2つに分け、半分の学校では毎日、40分の外での活動の時間を1コマ足しました。残りの半分は、いつもどおりです。これを3年間続けました。

いつもどおりの学校39.5%
毎日40分、外の活動を足した学校30.4%

3年間で新しく近視になった子の割合(棒は50%を右はしとした長さ)。He et al. (2015) より作成

3年間で新しく近視になった子は、いつもどおりの学校で39.5%、外の活動を足した学校で30.4%。差は約9ポイントでした。

台湾の高雄長庚記念病院のPei-Chang Wuらも2018年、医学誌Ophthalmologyで、小学1年生693人の実験を発表しました。外に出るよううながした学校の子は、1年間の近視の進み方が小さく、急に進む子の割合が54%低くなりました。

つまり、「外の時間をふやすと、近視になる子がへる」ことは、観察だけでなく、実際にためした実験でも確かめられています。ただし、外の活動を足した学校でも、3人に1人近くは近視になっています。「外で遊べば近視にならない」のではなく、「なる子が少しへる」「なるのがおそくなる」という話です。

大事なのは「運動」より「外にいること」

外遊びの何が目にいいのでしょうか。オーストラリアのシドニー大学のKathryn Roseらは2008年、同じ医学誌で、6歳1,765人と12歳2,367人を調べた研究を発表しました。12歳の子では、外ですごす時間が長いほど近視が少なく、その関係はスポーツをしているかどうかではなく、外にいる時間そのものと結びついていました。屋内のスポーツとは、関係がありませんでした。

外の明るさが関係していると考えられています。台湾のWuらの実験では、強い日ざしの下でなくても、ろうかや木かげのような場所で長めにすごすことにも意味がありそうだと報告されています。日本眼科医会も、木かげでも近視の予防に十分な明るさがえられることが多い、と説明しています。真夏の炎天下で走り回る必要はなさそうです。

ただし、Roseらの研究では、6歳の子ではこの関係ははっきりしませんでした。また、25の研究をまとめた分析(Xiongら、2017年)によると、外の時間は近視に「なる」のをふせぐ効果はあったものの、すでに近視になった目が「進む」のをおさえる効果は確かめられませんでした。早いうちからの習慣に意味がある、ということです。日本眼科医会も、外での活動の予防効果は年齢の低い子どもほど高い、としています。

「1日2時間」という目安はどこから来たのか

日本眼科医会は「近視がある子もない子も、1日2時間は外にいることが有効」と説明しています。日本眼科学会も、外での活動が1日2時間以上など長いと、近視の発症や進行はおさえられる、としています。

この「2時間」は、目安です。実験でためされたのは「1日40分ふやす」「週に11時間まで外に出る」といった形で、「2時間でちょうど効く」と確かめられたわけではありません。研究をまとめた分析も、どのくらいの時間が必要かは、まだ決まっていないと書いています。上海で6〜9歳の約6,300人に行われた実験(Heら、2022年)では、40分足した学校で近視がへりましたが、80分足した学校との差は出ませんでした。

文部科学省の調査では、休みの日に外で120分以上すごす子は、30分未満の子より、視力が下がることとの関係が小さいという結果でした。ただ、近視に新しくなることとの関係は、この調査でははっきりしませんでした。

まとめると、「長いほうがよさそうだが、何分なら十分かは分かっていない」が今の正直な答えです。2時間に届かないから意味がない、ということはありません。40分ふやすだけでも、実験では差が出ています。

経営学のヒント:こわれる前の手入れは、こわれてからの修理より安い

工場の機械の手入れには、2つのやり方があります。こわれてから直す「事後保全」と、こわれる前に決まった間隔で手入れをする「予防保全」です。日本の工業規格(JIS)にも定義がある、ものづくりの基本の言葉です。

こわれてから直すやり方は、ふだんは手間がかかりません。そのかわり、こわれたときに工場が止まり、修理にも大きなお金がかかります。予防保全は、まだ動いている機械に手をかけるので、一見むだに見えます。効果が「何も起きなかった」という形でしか現れないからです。それでも多くの工場が予防保全をえらぶのは、こわれてからでは元にもどせないものがあると知っているからです。

目も同じです。メガネをかければ見えるようにはなりますが、近視そのものがなくなるわけではありません。そして研究によれば、外の時間は「なる前」には効くけれど、「なってから」進むのをおさえる効果は確かめられていません。手を打てるのは、こわれる前だけです。

予防保全をうまく続けている工場には、共通点があります。「気がついたらやる」ではなく、予定に先に入れてしまうことです。効果が見えにくいことほど、気分にまかせると後回しになるからです。

今日からできること

1と2は上の研究や学会の説明から言えること、3〜5は考え方をもとにした工夫です。

  1. 外にいる時間を、今より少しふやす。目安は1日2時間ですが、まずは今より40分。園での外遊びの時間も数に入ります。
  2. 「運動させる」より「外にいる」。公園のベンチでおやつ、ベランダでシャボン玉、木かげでお絵かきでもかまいません。走り回らなくても、外の明るさの中にいることに意味がありそうです。
  3. 予定に先に入れる。「晴れたら行く」ではなく、「土曜の午前は公園」「園の帰りは10分だけ寄り道」と決めておきます。買い物に歩いて行く、のように用事とくっつけると続きます。
  4. 家の中の遊びを、外に持ち出す。絵本やお絵かきが好きな子なら、それをそのまま外でやります。好きな遊びをやめさせる必要はありません。
  5. 暑い日や日ざしの強い日は、むりをしない。帽子をかぶり、木かげをえらびます。真夏は朝や夕方にします。

動画やゲームの時間については、ショート動画の記事でも書きました。今回の研究が示しているのは、「画面をへらす」こととは別に、「外の時間をふやす」ことに意味がある、という点です。

目を細めて見る、テレビに近づく、片目をつぶる、といった様子があるときは、眼科で見てもらってください。近視だけでなく、小さいうちに見つけたほうがいい目の問題もあります。

まとめ

  • 日本の調査では、近視にあてはまる子が小学1年生の12.43%から、2年後に35.87%へふえた(文部科学省 近視実態調査)
  • 学校で毎日40分、外の活動を足すと、3年間で近視になった子が39.5%から30.4%にへった(He et al., 2015)
  • 関係していたのはスポーツではなく、外にいる時間(Rose et al., 2008)。木かげなどでも意味がありそう(Wu et al., 2018)
  • 外の時間は、近視に「なる」のをへらす。すでになった近視が「進む」のをおさえる効果は確かめられていない(Xiong et al., 2017)
  • 「1日2時間」は学会が示す目安。何分で十分かは、まだ決まっていない
  • 手を打てるのは、なる前だけ。外の時間を、予定に先に入れる
参考にした情報
日本の近視の調査:文部科学省「児童生徒の近視実態調査」(令和3〜5年度)/同・まとめ
裸眼視力の統計:文部科学省「令和7年度学校保健統計」
世界の近視の予測:Holden et al. (2016) Ophthalmology
外の活動を足す実験(広州):He et al. (2015) JAMA
外の活動と明るさの実験(台湾):Wu et al. (2018) Ophthalmology
外にいる時間とスポーツ:Rose et al. (2008) Ophthalmology
研究のまとめ:Xiong et al. (2017) Acta Ophthalmologica
40分と80分の実験(上海):He et al. (2022) Ophthalmology
学会の説明:日本眼科医会「気をつけよう!子どもの近視」/日本眼科学会「近視進行抑制」
予防保全と事後保全:JIS Z 8115:2019(ディペンダビリティ用語)