べるぞね

「うんち出たー!」。教えてくれる娘のおむつを替える。もうすぐ5歳。おしっこは、自分から「トイレ行く」と言ってトイレに行けます。それなのに、うんちはまだおむつで、出たあとに教えてくれます。便はふつうの健康そうなうんち。トイレは好きなピンク色にして、かわいいもふもふキャラのマットや便座カバー、踏み台、子ども用の便座も用意しました。それでも変わらない。あと何をすればいいんだろう。大学の研究と、子どもの排泄を支える医療機関の案内から調べました。

ピンクのマットと補助便座がある清潔なトイレの入口で、服を着た娘の目の高さにしゃがんで話すパパのドット絵イラスト

先に、今回の結論です。おしっこがトイレでできても、うんちだけおむつにする子は研究に出てきます。ただ、「もうすぐ5歳でも、何もしなくて大丈夫」と年齢だけで言い切ることはできません。便の状態や、本人がどこで困っているのかを確かめ、必要なら小児科に相談しながら、移り方を小さく分けるのがよさそうでした。

うちの場合、少量の便が何度もにじむと分かっているわけではなく、おむつで普通の便を出して、あとで知らせてくれる形です。ここを「便がたまって漏れている」と決めつけず、まずはおむつでの排便からトイレでの排便へ、どう橋をかけるかを中心に考えます。

「うんちだけおむつ」と「便がたまって漏れる」は、分けて考える

「トイレでうんちをしない」と言っても、中身はひとつではありません。おむつならまとまった便を出せる子もいれば、出すと痛いので我慢している子、便がたまったところから少しずつ漏れている子もいます。見えている結果が似ていても、同じ対応でよいとはかぎりません。

英国の公的医療機関、Gloucestershire Health and Care NHSの排泄支援ページは、おむつでしか排便しない子が、みんな便秘というわけではないと明記しています。便秘のほかにも、便器に座る怖さ、水が流れる音やはねる水、座ったときの不安定さ、おむつがある安心感など、いくつかの理由を挙げています。

一方、英国NHSの便漏れの説明では、たまった硬い便の周りから、やわらかい便が漏れてしまうことも紹介されています。この場合は本人が気づかなかったり、意思では止めにくかったりします。「やわらかい便が付いているから、便秘ではない」とも言い切れません。

うちの娘について分かること・分からないこと:普通の便をおむつに出し、出たあとに自分で教えてくれます。これだけで便秘とも、便秘ではないとも診断できません。出す前の感覚に気づいているか、座ることが嫌なのか、座れても出せないのかは、別に確かめる必要があります。

「出たあとに言うなら、出る前にも言えるはず」と思いたくなります。でも、出たことが分かることと、出る前の感覚を捉えて、遊びをやめ、トイレへ移動することは、同じ動作ではありません。娘ができることをまとめて「まだできない」にせず、どこから先が難しいのかを見るほうが、次の一歩を考えやすそうです。ここは、研究の効果量ではなく、私の整理です。

繰り返していて親子が困っているなら、誕生日までに外そうと急ぐより、普通の小児科の診療で相談してかまいません。今回の資料から、「5歳までは受診しなくてよい」という決まりは見つかりませんでした。

大学の研究では、何が分かっている?

アメリカのペンシルベニア大学医学部に所属するBruce Taubmanは1997年、幼児のトイレ訓練を前向きに追い、おしっこはトイレでできるのに、排便だけトイレを拒む行動を調べた研究を医学誌『Pediatrics』に発表しています。登録時は18〜30か月の子どもで、追跡を終えた482人のうち106人が、少なくとも1か月、便のトイレを拒む時期を経験しました。

この研究は、「おしっこができたら、うんちも必ず一緒にできる」という前提に、待ったをかける材料になります。ただし、幼い時期から追ったアメリカの家庭の調査です。この人数や割合を、5歳でおむつを使う子の割合として読むことはできません。また、うちの娘の今後を予測する数字でもありません。今回、5歳で普通の便をおむつにし、事後報告する子にぴったり限定した割合は確認できませんでした。

同じ研究グループのTaubman、Nathan Blum、Nicole Nemethは2003年、親への働きかけを加える試験も発表しています。ペンシルベニア大学やフィラデルフィア小児病院に関係する研究者によるもので、登録時17〜19か月の子どもを無作為に群分けし、381人を追跡しました。

どちらの群にも、子どもの様子に合わせて進めるトイレ訓練を案内。そのうえで、片方の群の親には、便に否定的な言葉を使わないことと、積極的なトイレ訓練を始める前のおむつでの排便をほめることを追加で勧めました。便でトイレを拒む子の発生は減りませんでしたが、拒む時期は、追加の案内を受けた群で短かったと報告されています。

この試験は、もうすぐ5歳の子に今から同じ対応を始めた場合の効果を調べたものではありません。追加した内容もひとまとまりなので、「言葉を変えるだけで治る」「親の言い方が原因だった」とは言えません。期間の細かい数値は要旨と本文の表で一致しないため、ここでは載せていません。

2004年には、同じグループが、便のトイレ拒否と硬い便や排便痛の順番を調べた研究も発表しています。両方を経験した子では、硬い便や痛みが先に現れることが多かったという結果でした。ただし、これも小さい子の観察研究です。普通の便に見える娘を、ここから便秘と判断することはできません。

研究から受け取れるのは、「強く言えば覚えるはず」と考える前に、体の困りごとを確認し、排便を責める対象にしない、という方向です。すぐに成功する裏技が見つかったわけではありませんでした。

ピンクのトイレにしても変わらないのは、準備が足りないから?

好きな色にして、好きなキャラを置いて、踏み台も補助便座も用意した。「これだけやっても、まだだめなのか」と、親のほうが疲れてきます。でも、先ほどの公的医療機関の説明を読むと、見た目が好きなことと、そこで安心してうんちを出せることは、別の条件なのだと分かります。

たとえば、トイレの部屋は好きでも、おむつがなくなる感覚には慣れていないかもしれません。座ることは平気でも、便が落ちるときだけ嫌なのかもしれません。ただ、これらは考えられる理由であって、娘の理由がそうだと確かめられたわけではありません。

今ある道具についても、「買ってあるか」より、使ったときの安定を見ます。両足の裏が踏み台にしっかり着くか。補助便座がずれたり、お尻が落ちそうに感じたりしないか。NHSの姿勢の案内では、膝が腰より少し高く、体をやや前に傾けられる姿勢を紹介しています。

服を着たまま閉じた便器に座る練習をする娘と、踏み台に載る両足を見守るパパのドット絵イラスト

これは、すでにある踏み台を捨てて、新しい物を買うという話ではありません。高さも安定も合っているなら、そのままでよさそうです。好きなピンクやもふもふのカバーを、今すぐ全部外す必要があるという資料も見つかりませんでした。実際に本人が触り心地や滑りを嫌がるなら調整する、という順番で考えます。

「なんでできないの?」と理由を答えさせるより、「座るのは平気?」「水の音はどう?」と、落ち着いているときに短く確かめるくらいから。答えが出なければ無理に追いかけず、座れる場面と嫌がる場面を見ておきます。親の推測を、本人の本音として決めてしまわないようにしたいです。

おむつを取り上げず、「出す場所」と「座る練習」を少しずつ変える

英国で子どもの排泄を支援する団体ERICには、「おむつでしかうんちをしない子」への案内があります。公的医療機関からも紹介されている資料です。そこでは、おむつを求める子に、いきなり使わせない対応をせず、我慢して便秘になるのを避けながら、行動を徐々に変えていくよう勧めています。

大事なのは、「おむつのままで何年でも待つ」と「今日から取り上げる」の二択にしないことでした。便秘や痛みがある場合は、先に医療者と対応する。そのうえで、今できることと、トイレで出すことの間に、小さな練習を置きます。

娘は、おしっこなら自分から「トイレ行く」と言って行けています。そのとき座ることが平気なら、下の「服を着たまま座る」段階を最初からやり直す必要はありません。うんちのときはどこにいるか、おむつを付けたままならトイレの部屋に入れそうか、排便のために座ることは受け入れられるか。すでにできるところを飛ばして、次の小さな変化を考えます。

おむつからトイレへ移るときの、小さな段階の例
今の段階次に試すこと
出たあとに教える「教えてくれてありがとう」で受け止める。直前の様子を、親が静かに観察する
トイレの部屋に慣れる排便と関係のないときに、服を着たまま短く座る。出させようとしない
出そうな様子が分かる本人が受け入れられるなら、おむつはそのままで、トイレの近くや室内へ移る
おむつなら安心して出せる座ることにも慣れたら、おむつを付けたまま便座に座る段階を相談する

後半の段階はERICとNHSの支援資料で紹介されている考え方です。最初の「事後報告を受け止めて様子を見る」は、うちの状況に合わせた私の工夫です。この表の順番を、5歳の娘に実施して効果が出たという記録ではありません。本人の様子に合わせ、必要なら小児科や排泄を支える専門職と相談します。

座る練習の最初は、便を出す時間にしなくてよいとERICは説明しています。服を着たまま、たとえ5秒だけでもよい、という例です。「座れたら次はうんち」とすぐに要求を増やすと、安心して座る練習ではなくなります。怖がったら長く座らせず、受け入れられるところに戻ります。

うちのように出たあとで教える形なら、まだ排便前に移動できるとはかぎりません。まず、出る前に決まった場所へ行くか、動きが止まるか、表情が変わるかを見てみる。何も分からなければ、そのことも相談の材料です。便が出かかってから抱えて連れて行ったり、出るのを止めさせたりする方法にはしません。

場所を変えようとして出さなくなるなら、先へ進めるより、楽に排便できる状態を守ることが先です。これ以上我慢しないか、便が硬くならないかを見ながら相談します。移動や座ることを受け入れた小さな一歩を認め、便が出なかったことは失敗にしないようにします。

経営学のヒント:「場所を整えた」の次は、行動の条件を分けて見る

職場でも、「使いやすい道具を用意したのに、思ったように動いてもらえない」ということがあります。そこで、やる気だけを疑うと、見えていない条件を取り落とします。

英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンなどのSusan Michieらが2011年に発表した行動変化の枠組みに、COM-Bがあります。行動を、できる力、行動する機会、行動を生む気持ちや習慣の組み合わせで考えるものです。「気持ち」には、意識して決めることだけでなく、感情や慣れた反応も含みます。

これは経営学だけの理論ではなく、健康行動などを考えるための枠組みです。ここでは、職場の仕組みを見直すときにも通じる見方として借ります。

  • できる状態か。体の困りごとはないか。便意に気づき、座って出すために、何を練習する必要があるか
  • 機会と場所はあるか。便座や足元が安定し、急かされずに行けるか
  • 安心してやれそうか。おむつのほうが安心なのか、便器で出すときに怖いことがあるのか
この枠組みが、娘のトイレ問題に効果を持つと実験で示されたわけではありません。上の対応づけは私の考えです。便秘などの医学的な判断の代わりにはしません。

ピンクのトイレを用意したことは、無駄だったと決めなくてよい。でも、それで行動に必要な条件がすべてそろったともかぎらない。「さらにかわいくしよう」や「もっと言い聞かせよう」に進む前に、今見えていないところを確かめる。親の準備不足や、子どものやる気不足にまとめない見方として、役に立ちそうだと思いました。

今日からできることと、小児科に相談する目安

以下は、医療機関とERICの案内を、今回の家庭の状況に合わせて整理したものです。この手順全体で効果を確かめた研究があるわけではなく、薬や便秘治療を自分で決めるためのものでもありません。

  1. 「出たよ」の報告を受け止める。「教えてくれてありがとう。替えよう」でよいと思います。「どうして先に言わないの」「もう5歳なのに」は、報告のたびに足さないようにする。事後報告を、叱られる時間にしないための私の工夫です。
  2. おむつを急に取り上げない。排便を我慢するほどの変更は避けます。おしっこでトイレに行けていることまで、うんちと一緒に「できていない」にしません。
  3. 便と、出る前の様子をメモする。出た日・おおよその量・硬さ・痛がる様子・出た場所、出る前に分かる合図があるかを残します。監視したり、本人に毎回説明を求めたりするためではなく、相談で状況を伝えるためです。
  4. 今ある便座と踏み台で、座った安定を確かめる。足が浮かないか、お尻がぐらつかないかを見る。すでに合っているなら、買い足すことを次の課題にしません。
  5. すでにできることの、次の小さな段階を選ぶ。おしっこで座れているなら、座る練習のやり直しを課題にしなくてよい。座ること自体が苦手なら、排便と別のときに服を着たまま短く座るところから。場所の移動や、おむつを付けて座る練習も、本人が受け入れられる範囲で考えます。
  6. かかりつけの小児科に、今のままを伝える。「もうすぐ5歳。尿はトイレ。便は普通の形でおむつに出し、あとで教える。踏み台と補助便座はある」と言えば、相談の入口になります。痛みや便秘の確認と、家庭での段階の組み方を相談します。
娘と机に並び、便の様子を伝えるための記録を右手の鉛筆で付けるパパを肩越しに見たドット絵イラスト

園にも、本人をみんなの前で責めないこと、着替えやおむつの扱い、トイレへの誘い方について相談しておくと、家と園で違う要求が重なるのを避けられそうです。これは日本の園の制度を一律に説明するものではなく、家庭から共有する内容の例です。

便が硬い、出すと痛がる、血が付く、強く我慢する、小さい便ややわらかい便が繰り返し下着に付く、腹痛や食欲低下があるときは、単に練習を増やすより、医療機関に伝えたい症状です。普通に見える便が出ていても、症状が加わったら相談してください。

急いで受診する目安:便漏れなどに加えて、お腹が大きく張って吐く、両脚の力が入りにくい・しびれるといった場合は、通常の練習を続けず、急いで医療機関へ。英国NHSも、便漏れにこうした症状が重なる場合は急ぎの相談を勧めています。

日本小児栄養消化器肝臓学会の患者向けページも、便秘は一人ひとり違い、自己判断で治療せず医師に相談するよう説明しています。今回調べた海外の薬の種類や使い方を、娘にそのまま当てはめることはしません。

家のリビングで記録ノートと相談に持っていくかばんを用意し、穏やかに寄り添うパパと娘のドット絵イラスト

まとめ

  • おしっこがトイレでできても、うんちだけ拒む子は研究に出てくる。ただし、幼い子の研究の割合を5歳の割合として使わない
  • 普通の便をおむつで出すことと、便がたまって少しずつ漏れることは分けて見る。見た目の情報だけで便秘と診断しない
  • 好きな色のトイレや踏み台があっても、安心して便を出せる条件までそろったとはかぎらない
  • おむつを急に取り上げず、服を着たまま座る、受け入れられる範囲で場所を移すなど、小さく進める。出せなくても叱らない
  • 「出たよ」と知らせる今を出発点にして、便や排便前の様子をメモし、小児科で相談する

ピンクのトイレにしたのに変わらなかったからといって、親が何もできていないわけでも、娘が何も進んでいないわけでもない。今は、出たことを教えてくれる。そこを消さずに、次の小さな一歩を探したいと思います。

参考にした情報
便だけのトイレ拒否の追跡研究:Taubman (1997), Pediatrics。要旨を確認。幼い時期から追ったアメリカの家庭での研究で、5歳の割合ではありません。
親への働きかけの無作為比較試験:Taubman, Blum & Nemeth (2003), Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine。本文を確認。否定語回避とおむつ排便をほめる案内を一括で検証。
硬便・排便痛と拒否の順番:Blum, Taubman & Nemeth (2004), Pediatrics。要旨を確認。同じ研究グループの観察研究で、今回の娘の原因を示すものではありません。
おむつからの移行と姿勢:Gloucestershire Health and Care NHS「Bladder and Bowel Care」
段階的な練習:ERIC「Children who will only poo in a nappy and other toilet avoiders」。支援資料で、ここに紹介された家庭の段階を娘へそのまま当てはめるものではありません。
便漏れと受診目安:NHS「Soiling (child pooing their pants)」
日本の学会の患者向け案内:日本小児栄養消化器肝臓学会「便秘ガイドライン〈患者様〉」。一般向けの公開説明を参照し、最新の診療指針全文を読んだとはしていません。
行動変化を考える枠組み:Michie, van Stralen & West (2011), Implementation Science。COM-Bの原著本文を確認。娘へのトイレ訓練の効果を確かめた研究ではありません。
資料の確認日:2026年10月17日。この記事は家庭の経験と調査をまとめたもので、お子さんの診断や個別の治療の代わりにはなりません。