べるぞね

夜中にふと見ると、布団は足もとで丸まって、子どもはお腹を出して大の字。かけ直して30分後に見に行くと、また同じ。寒くなってくると「これで風邪をひかないかな」と気になって、何度も起きてしまいます。今回は、子どもの寝相と体温の研究、冬の寝室の温度の調査、国の睡眠のガイドから、布団をかけない子にどうすればいいのかを調べました。

夜の和室で、布団を足もとに蹴とばして大の字で眠る子供と、布団を持ち上げて苦笑いするパパを上から見たドット絵イラスト

先に分かったことを書きます。

  • 幼児は、布団をかけずに寝ているのがむしろ多数派でした。日本の未就学児18人を調べた研究では、約70%が布団なしで寝ていました。
  • 子どもはよく動きます。寝ている間に姿勢を変える回数は、3〜5歳で1時間に平均4.4回。大人より多めでした。
  • 「布団をかけないと風邪をひく」を、子どもで直接確かめた研究は見つかりませんでした。ただ、寝室の寒さと子どもの風邪の関係を示す日本の調査はあります。

布団を「かけ直す」より、「かけなくても冷えない」ようにするほうが、親も子も眠れそうだ、というのが今回のまとめです。順番に見ていきます。

なぜ布団を蹴とばすの?眠るとき、体は熱を逃がしている

人は眠りにつくとき、体の中心の温度(深部体温)を下げます。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」には、寝る前に手足の皮膚の血流が増えて、体の熱が外に逃げ、深部体温が下がりはじめると、眠りやすくなると書かれています。

ネイチャー誌にのった研究(Kräuchi ら、1999年)では、手足の皮膚の血管がどれだけ広がって熱を逃がしているかが、寝つきの早さをいちばんよく予測していました。これは大人の研究です。4〜9か月の赤ちゃんを調べた研究でも、消灯後に足の皮膚の温度が上がり、お腹との温度差が広がる子ほど、早く寝ついていました。

幼児では、日本の未就学児18人とその母親の寝ている間の皮膚の温度などを測った研究があります(Okamoto-Mizuno ら、2018年)。子どもは母親より皮膚の温度も、寝床の中の温度も低く、約70%の子が布団をかけずに寝ていました。著者は、大人より低い皮膚の温度と、布団をはぐなどの「行動での体温調節」が、幼児の眠りに大事なのかもしれない、と考えています。

この研究は18組と少なく、季節や家の条件も限られます。それでも、「布団をはぐのは、子どもなりに暑さを調節しているのかもしれない」と考えるきっかけになりました。

子どもは寝相が悪い?年齢でくらべた数字

De Koninck らの研究(1992年)は、3〜5歳から65〜80歳までの5つの年代、それぞれ10人を、実験室で睡眠の検査をしながらビデオで撮り、寝ている間に姿勢が変わる回数を数えました。

年齢が上がるほど、寝ている間の動きは減っていきました。30代の親から見ると、子どもは1時間に1〜2回ほど多く寝返りや姿勢の変化をしている計算です。厚生労働省の健康情報サイト「e-ヘルスネット」も、寝返りには体温を調節する、寝床の中の温度を保つ、熱や水分の発散を調節する、といった働きがあると説明しています。

よく動くぶん、布団がずれるのは自然なことでした。何度かけ直しても、また蹴とばしているのは、寝相が「悪い」というより、体がちゃんと仕事をしている、と見ることもできそうです。

寝る前の部屋で、パジャマの子供が両手を上げ、ひざをついたパパが、ひざ丈のキルトのスリーパーを着せてあげているドット絵イラスト

布団をかけないと、風邪をひく?

ここが一番気になるところです。結論から言うと、「布団をかけずに寝た子は風邪をひきやすい」を直接調べた研究は、今回は見つかりませんでした。近い研究を2つ紹介します。

ひとつは、健康な人180人の実験です(Johnson と Eccles、2005年)。くじ引きで半分の人の足を冷やし、残りの人は冷やさない手順にしました。その後4〜5日のうちに「風邪をひいた」と答えたのは、足を冷やした90人中13人、冷やさなかった90人中5人でした。ただし、冷やした直後の症状は変わらず、本人の申告だけで、実際にウイルスに感染したかは調べていません。著者自身も、症状とウイルス感染の関係はさらに研究が必要だとしています。寒さと感染についての研究のまとめも、「すべての研究が一致しているわけではない」としています。

もうひとつは、日本の子どもの調査です(Miyake ら、2021年)。九州の会社の社員の子ども(12歳未満)を、寝室で暖房を使っていない155人と、使っている156人にわけて、風邪や熱の回数などをくらべました。

暖房を使っている子のほうが、どれも少なめでした。ほかの条件をそろえて分析すると、風邪を3回以上ひくことのオッズ(なりやすさの比)は0.35と低く、6歳未満のほうが関係が強く出ていました。

この調査の限界:上のグラフのように単純にくらべると、どの項目も統計的にはっきりした差ではありませんでした。実際の寝室の温度は測っておらず、暖房を使っているかどうかを聞いただけのアンケートです。暖房を使う家とそうでない家では、ほかの暮らし方もちがうかもしれません。「暖房をつければ風邪が減る」と言い切れる研究ではありません。

つまり、布団そのものより、寝ている部屋や寝床のまわりが冷えすぎていないかのほうに目を向けたほうがよさそうでした。

寝室は何度くらい?日本の冬の寝室は思ったより寒い

世界保健機関(WHO)の「住まいと健康のガイドライン」(2018年)は、寒さによる健康への悪い影響を防ぐ室温として、最低18℃が広く受け入れられているとしています。ただし、どこから悪影響が出るかの正確な温度を決めるには証拠が足りないこと、そして子どもや高齢者など影響を受けやすい人には、18℃より高い温度が必要な場合があることも書いています。

では、日本の家の冬の室温はどのくらいでしょうか。全国2,190戸で冬に2週間、実際に温度を測った調査(Umishio ら、2020年)があります。

寝室の平均は12.8℃で、WHOの目安より5℃以上低い結果でした。一方で、国の睡眠ガイド2023は、冬に寝室が寒くなっても睡眠が悪くなるという報告は少なく、寝具を十分に使って寝床の中が暖かく保たれていれば、睡眠への影響は少ないと考えられる、としています。e-ヘルスネットは、寝床の中の温度は33℃・湿度50%が最適とされる、と説明しています。

ここで、布団をかけない子との問題が見えてきます。大人は「部屋が寒くても布団の中が暖かい」で眠れます。でも布団から出てしまう子どもは、部屋の温度をそのまま浴びて寝ていることになります。

そして、逆の心配もあります。日本の幼児と母親の睡眠を調べた研究(水野一枝さんの科研費の報告)では、季節の中で睡眠をいちばん妨げていたのは冬の寒さではなく夏の高温多湿で、その影響は母親より幼児のほうが大きい可能性があるとされています。大人の研究をまとめた論文でも、寝具や服を使っていれば13〜23℃の範囲では睡眠に差がなく、暑さのほうが眠りを浅くするとされています。暖めすぎ・着せすぎも、布団を蹴とばす理由になりそうです。

月明かりの寝室で、スリーパーを着て横向きに眠る子供の背中に、パパがそっと手を入れて汗や冷えを確かめているドット絵イラスト

経営学のヒント:人ががんばる仕組みより、がんばらなくていい仕組み

工場の品質管理には「ポカヨケ」という言葉があります。人がうっかりミスをしても、不良品が出ないように、道具や手順のほうを工夫しておく考え方です。「気をつけよう」と呼びかけ続けるより、気をつけなくても困らない形にしておく。日本の製造現場から広まった考え方として知られています。

ここは、一般的な品質管理の考え方を、夜の寝かせ方に当てはめた私の整理です。子どもの睡眠についての経営学の研究があるわけではありません。

布団に当てはめると、「親が夜中に何度も起きて、布団をかけ直す」は、人ががんばる仕組みです。子どもはまた蹴とばすし、親は眠れません。一方で、

  • 着る布団(スリーパー):布団から出ても、体の上には残る
  • パジャマの重ね方:布団なしでも冷えすぎない服にしておく
  • 寝室の温度:布団の外の空気が冷えすぎないようにする

は、子どもが布団を蹴とばしても困らない仕組みです。スリーパーについて、効果をくらべた研究は今回見つけられませんでした。それでも、「布団をかけ続ける」という親の努力に頼らない方法として、わが家ではまず試してみる価値があると考えました。

ポカヨケのもうひとつのコツは、「ちゃんとできているか」を確かめる場所を決めておくことです。毎回すべてを見なくても、ここを見れば分かる、という場所。夜の子どもなら、それは次の章の「背中」です。

寝るときの服装は?手足ではなく、背中と首で確かめる

京都府の子育てQ&Aは、乳児向けの案内ですが、室温だけにこだわらず、体や手足が冷たくないか、汗ばんでいないかを見てあげることが必要で、室温が一定でなくても服を1枚着たり脱いだりして調節できる、と書いています。暖房時の室温の目安は20度前後です。

ここで気をつけたいのが、手足の冷たさです。さきほど書いたように、眠りにつくときは手足から熱を逃がすので、手足の感じ方は時間によって変わります。そこで私は、首のうしろや背中に手を入れて確かめることにしています。これは研究で決まったやり方ではなく、手足で判断しにくいことから考えた私の工夫です。

  • 背中がしっとり汗ばんでいる → 着せすぎ・暖めすぎかもしれない。1枚へらす
  • 背中やお腹がひんやりしている → 冷えているかもしれない。スリーパーや服で足す
  • どちらでもない → そのままでいい。布団をかけ直すために起こさない

e-ヘルスネットは、寝具が冷えていると体が熱を作ろうとして筋肉が縮み、不自然な寝相になることがあるとして、冬は前もって毛布などで寝具の中を温めておくと寝つきがよくなる、とも案内しています。寝る前に布団を少し温めておくのは、手軽に試せそうです。

朝日の差す寝室で、スリーパーを着たまま元気に両手を上げる子供と、寝ぐせ頭で大あくびをするパパのドット絵イラスト

今日からできること

次の手順そのものを家庭で試して、風邪が減ると確かめた研究があるわけではありません。研究と国の資料から、私が考えた段取りです。

  1. 布団をかけ直すのを、今夜は1回までにする。何度もかけ直すより、かけなくても冷えない準備のほうに力を使います。
  2. スリーパーか、少し厚めのパジャマを用意する。布団から出ても体の上に残るものを1枚。
  3. 寝室の温度を一度測ってみる。温度計を子どもの寝る高さに置きます。WHOの目安の18℃とくらべて、どのくらいかを知るだけでも判断しやすくなります。
  4. 暖めすぎにも気をつける。汗をかくほどなら、布団を蹴とばす理由はそこかもしれません。
  5. 確かめる場所は「背中」と決める。寝る前と、自分が寝る前の2回くらい。
  6. 寝る前に布団を温めておく。冷たい布団にもぐるより、寝つきやすくなるかもしれません。
相談の目安:寝汗がひどく毎晩着替えが必要、いびきや呼吸が止まるような様子がある、夜に何度も目が覚めて日中も元気がない、などが気になるときは、小児科に相談してください。熱があるときの寝かせ方は、そのときの体調で変わるので、かかりつけ医の指示を優先してください。

まとめ

  • 眠るとき、体は手足から熱を逃がして深部体温を下げる。布団をはぐのは、暑さの調節かもしれない
  • 日本の未就学児18人の研究では、約70%が布団をかけずに寝ていた
  • 寝ている間に姿勢を変える回数は、3〜5歳で1時間に4.4回。大人より多い
  • 「布団をかけないと風邪をひく」を子どもで直接確かめた研究はなかった。寝室を暖房している子のほうが風邪が少なめという日本の調査はあるが、因果関係までは言えない
  • 日本の冬の寝室の平均は12.8℃。かけ直すより、スリーパー・服・室温で「かけなくても冷えない」形にし、背中で確かめる

夜中に何度も布団をかけ直していたのは、子どもを守りたい気持ちからでした。でも子どもの体は、寝相でちゃんと温度を調節していた。親がやるべきなのは、布団の番ではなく、蹴とばしても大丈夫な寝床づくりなのかもしれません。